プレワークアウトサプリ、効果があるのは最初の4週間だけ? シネフリン追加は「意味なし」と判明した8週間RCT
ポイント
「毎日飲めば筋トレの成果が底上げされる」と謳われるプレワークアウトサプリ(PWS)。本研究はテキサスA&M大学が実施したもので、レジスタンス訓練経験のある健康な男性80人を、①プラセボ、②市販PWS(ベータアラニン・クレアチン硝酸塩・カフェイン284mgなど配合)、③同PWS+シネフリン20mg(ビターオレンジ抽出物)の3群に無作為・二重盲検で割り付け、8週間の同一トレーニングプログラム中に毎日摂取してもらいました。結果は「部分的に効くが、長続きしない」というものでした。4週目時点ではPWS群・PWS+S群でベンチプレスや脚のパワー、認知機能テスト(Stroopテスト)の伸びがプラセボより大きい傾向が見られましたが、8週目には全群がほぼ同じレベルまで追いつき、体組成(体脂肪・除脂肪量)にも群間差は出ませんでした。さらに、シネフリンを追加しても体脂肪減少や筋力アップの上乗せ効果は確認されず、心拍数・血圧・血液検査値・副作用の頻度もプラセボと変わらず安全性は良好でした。「毎日飲み続ければ効果が積み上がる」というイメージとは異なる結果と言えます。
あなたの生活にどう関係する?
この研究が支持するのは「トレーニング初期の集中力・立ち上がりの後押し」としての使い方です。目的が新しいプログラム導入時のモチベーション維持や、最初の1カ月で勢いをつけることなら妥当な選択肢。一方「長期の筋力・体組成の底上げ」を期待して継続購入するなら、8週間で差が消える点を踏まえコスパを再検討すべきです。シネフリン配合をうたう高価格帯製品を選ぶ理由は、この用量(20mg/日)では乏しいと言えます。カフェイン感受性が高い人・降圧薬服用者・不整脈既往がある人は成分表示(カフェイン量、シネフリン量)を必ず確認してください。
注意点
対象は6カ月以上の訓練歴がある健康な20代男性のみで、女性・初心者・中高年には外挿できません。使用されたPWSは特定の市販製品(Cellucor C4 Pre-Workout)で、他ブランドの配合比率や用量が異なれば結果も変わります。本研究は主要な統計解析(MANOVA全体検定)では有意差が出ておらず、報告された「差」の多くは平均変化量と95%信頼区間による副次的な比較に基づく点に注意が必要です。また資金提供元は当該製品の製造元であり、著者に企業との利害関係が開示されています。シネフリンは併用薬・基礎疾患によっては懸念も指摘されており、心疾患・高血圧のある方は医師に相談してください。
専門用語の解説
研究データ
試験デザイン
総合評価
JADAD Quality Assessment評価詳細
ランダム化
0点 / 2点盲検化
2点 / 2点脱落者・除外者
0点 / 1点対象集団
- 研究参加開始直前に少なくとも6ヶ月間のレジスタンストレーニング歴があり、ベンチプレスおよびレッグプレスまたはスクワットの実施を含むこと
介入
プラセボ(デキストロース)
対照群プレワークアウトサプリメント(PWS)(Cellucor C4 Pre-Workout)
治療群PWS+シネフリン
治療群アウトカム
| Outcome | Type | Effect | p-value |
|---|---|---|---|
| 体重 | 副次 | - | 時間 p=0.003; 群×時間 p=0.28 |
| 体脂肪量 | 副次 | - | 群×時間 p=0.61 |
| 除脂肪量 | 副次 | - | 時間 p=0.001; 群×時間 p=0.28 |
| 体脂肪率 | 副次 | - | 群×時間 p=0.36 |
| 総体水分率 | 副次 | - | 群×時間 p=0.37 |
| 安静時心拍数 | 副次 | - | p=0.26 |
| 収縮期血圧 | 副次 | - | p=0.96 |
| 拡張期血圧 | 副次 | - | p=0.54 |
| ストループ単語数 | 副次 | - | - |
| ストループ色名数 | 副次 | - | 交互作用傾向 p=0.087 |
| ストループ単語-色数 | 副次 | - | 二次効果 p=0.04 |
| 運動遂行準備感(VAS複合スコア) | 副次 | - | 群 p=0.27; 時間 p<0.001; 群×時間 p=0.66 |
| ベンチプレス1RM | 主要 | - | - |
| レッグプレス1RM | 主要 | - | - |
| ウィンゲート最大パワー | 主要 | - | -有意 |
| ウィンゲート平均パワー | 主要 | - | - |
| ウィンゲート総仕事量 | 主要 | - | - |
| 総挙上量(上肢/下肢) | 副次 | - | 群 p=0.69 |
| 相対エネルギー摂取量 | 副次 | - | p=0.19 |
| タンパク質摂取量 | 副次 | - | p=0.72 |
| 炭水化物摂取量 | 副次 | - | p=0.55 |
| 脂質摂取量 | 副次 | - | p=0.79 |
| 筋・肝酵素/異化マーカー(ALP、AST、ALT、クレアチニン、BUN、CK、LDH) | 副次 | - | 群 p=0.43; 時間 p<0.001; 群×時間 p=0.66 |
| 血糖・脂質パネル | 副次 | - | 群 p=0.44; 時間 p<0.001; 群×時間 p=0.58 |
| 白血球分画を含む全血球計算(CBC) | 副次 | - | 群 p=0.78; 時間 p=0.06; 群×時間 p=0.013有意 |
| 臨床正常範囲を超える血液化学値の発現率 | 副次 | - | - |
| 報告された副作用(めまい、頭痛、動悸、心悸亢進、息切れ、神経過敏、霞み目、その他) | 副次 | - | - |
安全性
結論
レジスタンストレーニング中に8週間PWS(トレーニング後サプリメント)およびPWS+S(シネフリン添加)を摂取したところ、明らかに健康な男性において、有意な副作用を伴うことなく、認知機能および運動パフォーマンスの一部の指標が改善した(特に4週時点で顕著)。しかし、これらの効果は8週時点までにプラセボとほぼ同程度となり、PWSに20mgのシネフリンを追加しても、体組成、認知機能、運動パフォーマンスにおいてPWS単独に対する上乗せ効果は認められなかった。限界
- 提供されたシネフリンの量(20mg/日)は、体重/体脂肪減少効果を報告した他の研究(例:Kaatsらの49~98mg/日)で使用された用量よりも少なく、これが体組成における上乗せ効果が認められなかった理由を説明しうる。
- 使用されたパフォーマンステスト(1RM筋力、Wingate無酸素性能力テスト)は、実行機能・認知機能を大きく必要としない可能性があり、認知機能の改善と運動パフォーマンスとの関連を検出する能力を制限した可能性がある。
- 4週時点で観察されたPWSによる認知機能および筋力への見かけ上のエルゴジェニック効果は、8週時点まではプラセボに対して持続されず、継続使用に伴い効果が経時的に減弱する可能性が示唆される。
- 本試験はClinicalTrials.govに研究実施後の2016年12月16日に遡及的に登録された。
- ほとんどのアウトカムにおいて有意な全体的MANOVA交互作用は認められなかったため、報告されている群間差の多くは、主要な全体検定(オムニバス検定)ではなく、副次的解析(ベースライン共変量MANOVAおよび95%信頼区間の比較)に基づくものである。