RCTJadad 3/5RandomizedDouble-BlindPlacebo-Controlled

NAD+前駆体サプリ「ニコチンアミドリボシド」で体組成が変わる?6週間の臨床試験が示した可能性と限界

The American Journal of Clinical Nutrition2020年8月22日Vol. 112 (2)

ポイント

「年齢とともに減少するNAD+を補えば、代謝が改善するのでは?」—この期待から注目を集めているのが、ビタミンB3の一種であるニコチンアミドリボシド(NR)です。オランダのマーストリヒト大学の研究チームは、健康な過体重・肥満の中高年男女13名を対象に、1日1000mgのNRを6週間摂取する二重盲検クロスオーバー試験を実施しました。

結果として、NR摂取により除脂肪体重(筋肉量の指標)が約1.3%増加し、体脂肪率が同程度減少。体重は変わらないものの体組成に好ましい変化が見られました。さらに、睡眠時の代謝率が約3%上昇し、筋肉内のアセチルカルニチン(エネルギー代謝に関わる物質)濃度も約50%増加。運動後のアセチルカルニチン生成能力も22%向上しており、エネルギー代謝の柔軟性が改善した可能性が示唆されました。

しかし、期待された主要評価項目—インスリン感受性とミトコンドリア機能—には改善が見られませんでした。血圧、肝臓・筋肉内の脂肪蓄積、心臓機能にも変化はありませんでした。興味深いことに、体組成の改善は女性7名中6名で観察された一方、男性では6名中1名のみで、性差がある可能性も示されています。

2024〜2025年の最新研究でも、NRは確実にNAD+代謝を活性化させるものの、代謝健康への効果は限定的との結果が多く報告されています。富山大学の研究では、NRの効果が腸内細菌叢に依存する可能性も明らかになっており、個人差が大きい理由の一つかもしれません。

あなたの生活にどう関係する?

【摂取を検討する場合のポイント】 本研究では1日1000mgを6週間摂取し、体組成の改善が観察されました。市販のNRサプリメント(Niagen®など)は通常250〜300mg/カプセルで販売されており、研究用量には3〜4カプセル/日が必要です。副作用は報告されておらず、この用量での安全性は確認されています。

【効果が期待できる可能性がある人】 ・中高年(45〜65歳)の過体重・肥満の方 ・特に女性(本研究では女性で効果がより顕著) ・運動習慣が少ない方で、代謝改善を目指す方

【期待しすぎない方がよい点】 ・劇的な減量効果は期待できません(体重自体は変化なし) ・インスリン抵抗性や血糖値の改善は本研究では確認されず ・ミトコンドリア機能や運動パフォーマンスの直接的向上も未確認

【コストパフォーマンスの観点】 NRサプリメントは月額1〜2万円程度と高価です。現時点のエビデンスでは、同等の効果を運動や食事改善で得られる可能性があり、費用対効果は慎重に検討すべきです。アセチルカルニチン代謝の改善が確認されたことから、L-カルニチンとの併用効果を検討する研究も進んでいます。

注意点

【研究の限界】 本研究は13名という小規模な試験であり、多重比較の統計補正が行われていないため、偽陽性(たまたまの結果)の可能性があります。また、6週間という期間は動物実験(8〜15週間)より短く、効果が十分に現れなかった可能性も。NAD+代謝物の測定がサプリ摂取から14〜16時間後に行われており、ピーク時の変化を捉えていない可能性もあります。

【市販品との違い】 研究で使用されたNRの品質・純度と市販サプリメントが同等かは不明です。また、2025年の富山大学の研究では、NRやNMNは腸内細菌によって分解される可能性が指摘されており、効果には個人の腸内環境が影響する可能性があります。

【専門家に相談すべきケース】 糖尿病や心臓疾患の治療中の方、他のサプリメントや薬を服用中の方は、必ず医師に相談してください。「アンチエイジング」を謳う誇大広告には注意が必要です。

専門用語の解説

ニコチンアミドリボシド(NR)ビタミンB3の一種で、体内でNAD+に変換される前駆体。牛乳や酵母に微量含まれ、サプリメントとして摂取可能。
NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)細胞のエネルギー代謝に必須の補酵素。加齢とともに減少し、代謝機能低下との関連が研究されている。
除脂肪体重(FFM)体重から体脂肪を除いた重量で、主に筋肉・骨・内臓の重さ。筋肉量の指標として使用される。
アセチルカルニチン脂肪酸をミトコンドリアに運搬するカルニチンの活性型。エネルギー代謝の効率と柔軟性に関わる。
クロスオーバー試験同じ参加者がサプリメントとプラセボの両方を期間を分けて摂取する研究デザイン。個人差の影響を最小化できる。
睡眠時代謝率(SMR)睡眠中に消費するエネルギー量。基礎代謝に近く、代謝機能の指標として使用される。
インスリン感受性インスリンに対する体の反応性。低下すると血糖コントロールが悪化し、糖尿病リスクが上昇する。
ミトコンドリア機能細胞内でエネルギー(ATP)を産生する能力。加齢や肥満で低下し、代謝疾患との関連が指摘されている。
研究データ

試験デザイン

Duration6 weeks
RegistrationClinicalTrials.gov: NCT02835664

総合評価

JADAD Quality Assessment
3
/ 5

評価詳細

ランダム化

2 / 2
研究がランダム化されていると記載されているか?
はい+1
根拠: 本研究は論文の複数箇所で明確に無作為化と記載されている。抄録には「無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー介入研究」と記載されている。方法のセクションでは、研究デザインを「無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバーデザイン」と説明し、さらに「コンピュータ生成乱数を用いた単純無作為化が適用された」と説明している。図の説明にも「参加者は6週間のNR補給または6週間のプラセボ治療を開始するよう無作為に割り付けられた」と記載されている。
ランダム化の方法が適切に記載されているか?
はい+1
根拠: 論文には研究で使用された無作為化の方法が明確に記載されている。「研究デザイン」のセクションでは、著者らが「コンピュータ生成乱数を用いた単純無作為化が適用された」と述べている。コンピュータ生成乱数は、予測可能性と選択バイアスを排除する確立された適切な無作為化方法であり、Jadadスケールにおける適切な無作為化方法の基準を満たしている。

盲検化

0 / 2
研究が二重盲検であると記載されているか?
はい+1
根拠: 本研究は抄録、緒言、方法(研究デザイン)の3箇所で明確に「二重盲検」と記載されている。研究デザインは一貫して「無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー」と特徴づけられている。
盲検化の方法が適切に記載されているか?
いいえ-1
根拠: 論文には本研究が「二重盲検」かつ「プラセボ対照」であり、NRとプラセボの両方がカプセルとして投与されたことは明確に記載されているが、盲検化の方法は記載されていない。プラセボカプセルがNRカプセルと外観(サイズ、色、形状)において同一であったかどうかの記載はなく、プラセボの成分についての記載もなく、二重盲検がどのように維持されたかについての明確な記述もない。Jadad基準では二重盲検化の方法が記載されており、かつ適切であることが求められる。方法が記載されていないため、この基準は満たされていない。

脱落者・除外者

1 / 1
脱落者数と脱落理由が記載されているか?
はい+1
根拠: 論文には脱落に関する情報が記載されている。方法のセクションでは、13名の参加者が研究を完了し、2名が脱落したこと、および脱落理由(個人的または医学的理由)が記載されている。詳細については補足図1が参照されている。これは全参加者が自身の対照として両方の治療を順次受けるクロスオーバー研究であるため、脱落者数と理由の全体的な報告はこのデザインとして適切である。提供された情報はJadad基準における脱落の記載要件を満たしている。

対象集団

サンプルサイズ13
年齢範囲45-65 years
疾患・状態健康な過体重または肥満
Inclusion Criteria
  • 年齢45〜65歳
  • BMI 27〜35 kg/m²
  • 座位中心の生活様式(週3時間未満の運動)
  • 6ヶ月以上の非喫煙
  • アルコール摂取量が1日2杯以下
  • 6ヶ月以上の体重安定
  • 活動性疾患がないこと

介入

ニコチンアミドリボシド

治療群
Dose1000 mg/日
Frequency毎日
Duration6週間
Route経口

プラセボ

対照群
Duration6週間
Route経口

アウトカム

OutcomeTypeEffectp-value
インスリン刺激下の骨格筋グルコース処理(ΔRd)主要--
骨格筋ミトコンドリア機能主要-1.04p=0.69
骨格筋NAD+代謝産物副次--
ニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NAAD)副次-P < 0.01有意
メチルニコチンアミド(MeNAM)副次-P < 0.01有意
除脂肪体重率副次1.34p=0.02有意
体脂肪率副次-1.34p=0.02有意
睡眠時代謝率副次0.19p=0.05有意
骨格筋アセチルカルニチン(C2)濃度副次1533.00p=0.04有意
MRSによる骨格筋アセチルカルニチン副次--
運動時のアセチルカルニチン生成能副次0.53p=0.01有意
肝内脂質含量副次-p=0.85
筋細胞内脂質含量副次-p=0.5
心臓PCr:ATP比副次-p=0.9
心臓左室駆出率副次--
24時間自由行動下収縮期血圧副次-p=0.56
24時間自由行動下拡張期血圧副次-p=0.39
空腹時血漿グルコース副次--
空腹時中性脂肪副次--
総コレステロール副次--
HDLコレステロール副次--
LDLコレステロール副次--

安全性

1000 mg/日のNRは忍容性が良好であり、有害事象や副作用の報告はなかった

結論

健康な過体重または肥満の男女において、1000 mg/日のNR補給を6週間実施したところ、骨格筋NAD+代謝産物(NAADおよびMeNAM)が増加し、骨格筋アセチルカルニチン代謝に影響を与え、体組成(除脂肪体重の増加、体脂肪量の減少)および睡眠時代謝率に軽度の変化をもたらした。しかし、主要評価項目であるインスリン感受性およびミトコンドリア機能には効果が認められず、肝内および筋細胞内脂質蓄積、心臓エネルギー状態、心臓駆出率、自由行動下血圧、炎症の血漿マーカー、エネルギー代謝にも効果は認められなかった。著者らは、この用量および投与期間でのNRは、健康な過体重または肥満者の代謝健康改善には有益でない可能性があると結論づけた。

限界

  • サンプルサイズが小さい(n=13)
  • 動物実験(8〜15週間)と比較して補給期間が短い(6週間)
  • 多重比較の補正が行われておらず、偽陽性の可能性が高まる
  • 一般的に健康な肝脂質含量(肝脂肪5%未満)を有する健康な集団
  • ウォッシュアウト期間にもかかわらず、クロスオーバーデザインにはキャリーオーバー効果がある可能性
  • NAD+代謝産物はサプリメント摂取後14〜16時間で測定
  • 一部のメタボロミクス解析でサンプル量が限られていた
このコンテンツはAI(LLM)によって生成されています。正確性には十分注意を払っておりますが、重要な情報については原著論文をご確認ください。