アシュワガンダで筋トレの成果は変わる? 8週間の臨床試験が示した筋力・筋肉量・持久力への効果
ポイント
「同じ筋トレをしているのに、なぜかサプリを使っている人の方が伸びが早い」——そんな経験はないでしょうか。今回紹介するのは、インドの2施設で行われた8週間のランダム化比較試験(RCT)です。18〜45歳の健康な男女80人(普段からジムでトレーニングしている人たち)を、標準化アシュワガンダ根エキス「KSM-66」600mg/日(朝夕300mgずつ)を摂るグループと、見た目が全く同じプラセボ(でんぷんカプセル)を摂るグループにランダムに分け、どちらも同じレジスタンストレーニングを週3回、8週間続けてもらいました。結果、アシュワガンダ群はプラセボ群に比べて、ベンチプレスとレッグプレスの1RM(最大挙上重量)、胸囲・上腕囲、そしてVO2max(最大酸素摂取量、有酸素持久力の指標)のすべてで統計的に有意な改善を示しました。効果量(Cohenのd)はベンチプレス1.14、レッグプレス1.11、VO2max 1.03と、いずれも「非常に大きい」部類に入ります。男女別で見ても効果は一貫しており、女性でもベンチプレスの効果量は1.56と男性より高い数値でした。副作用の報告はゼロ、血液・肝腎機能検査にも異常なしという結果で、この研究は既存のアシュワガンダ研究の中でも質の高いデザイン(無作為化・二重盲検・プラセボ対照)で行われた点が特徴です。
あなたの生活にどう関係する?
今回使われたのは「KSM-66」という特定の標準化エキス(ウィザノライド5%以上)を1日600mg、朝晩300mgずつに分けて摂取する方法です。市販サプリを選ぶ際は、ラベルに「KSM-66」や標準化率の記載があるものを選ぶと、研究条件に近づけられます。あくまで「レジスタンストレーニングと併用して初めて意味のある効果」が出た研究なので、トレーニングをしていない人がサプリだけ飲んでも同じ効果は期待できません。効果が出るまでには8週間かかっており、即効性を求めるものではない点も覚えておきましょう。コスト面では他のパフォーマンス系サプリ(クレアチンなど)と比べて安価な部類に入り、味や粉っぽさが苦手な人にはカプセルタイプという飲みやすさも利点です。すでにトレーニング歴のある人ほど、この研究の対象者像(3か月以上のジム経験者)に近く、恩恵を受けやすいと考えられます。
注意点
本研究の対象はインド在住の18〜45歳・健康な既トレーニング者に限られ、高齢者や持病のある人、未トレーニング者への外挿は慎重にすべきです。資金提供元はエキス製造元のIxoreal BioMed社であり、利益相反の可能性は念頭に置く必要があります。8週間という短期間の結果であり、長期使用の効果・安全性は未確認です。加えて近年、アシュワガンダ関連の肝機能障害(黄疸・かゆみなど)の症例報告が国際的に増えており、2017年以降35例ほど報告されています。本試験では肝機能検査に異常は見られませんでしたが、持病がある方・妊娠中の方・他の薬を服用中の方は、自己判断で摂取を始めず医師や薬剤師に相談してください。体組成(体脂肪率)への効果は今回の研究では検証力不足で判断できていません。
専門用語の解説
研究データ
試験デザイン
総合評価
JADAD Quality Assessment評価詳細
ランダム化
2点 / 2点盲検化
2点 / 2点脱落者・除外者
1点 / 1点対象集団
- 18~45歳の性別を問わない健常成人
- スクリーニング前3ヶ月以上、定期的な身体活動(ジムでの筋力トレーニング)を行っている者
- インフォームドコンセントに署名する意思がある者
- 研究期間中、同一の運動スケジュールおよび食事レジメンに従うことに同意した者
- 妊娠可能年齢の場合、バリア避妊法の使用に同意した者
介入
アシュワガンダ(KSM-66)標準化根抽出物
治療群プラセボ(デンプン)
対照群アウトカム
| Outcome | Type | Effect | p-value |
|---|---|---|---|
| 1回反復最大挙上重量(1RM)ベンチプレス | 主要 | 1.14 | <0.0001有意 |
| 1回反復最大挙上重量(1RM)レッグプレス | 主要 | 1.11 | 0.0005有意 |
| 上腕周囲径(筋周径) | 副次 | - | <0.0001有意 |
| 胸囲(筋周径) | 副次 | - | 0.019有意 |
| 大腿周囲径(筋周径) | 副次 | - | - |
| 心肺持久力(VO2max、最大酸素摂取量) | 副次 | 1.03 | <0.0001有意 |
| 有害事象 | 副次 | - | - |
安全性
結論
レジスタンストレーニングと併用したアシュワガンダ(KSM-66)根抽出物(600 mg/日)の8週間の摂取は、プラセボと比較して、男女両方の参加者において筋力(1RMベンチプレスおよびレッグプレス)、筋サイズ(上腕周囲径および胸囲)、心肺持久力(VO2max)を有意に改善し、有害事象は報告されなかった。これらの結果は、本サプリメントがアスリートにとって安全で効果的、かつ低コストなサプリメントとなり得ることを示唆している。限界
- コンプライアンス不良による予期しないデータ損失(追跡不能による脱落ではない)が発生したが、これはサンプルサイズの算出や研究計画において考慮されていなかった
- 被験者の食事摂取量(カロリーおよびタンパク質摂取量)に関する定量的データが不足しており、被験者の日誌による自己申告のアドヒアランスのみに依拠していた
- 両群の一部の被験者はカプセルを牛乳とともに摂取しており、本研究では牛乳摂取が研究パラメータに与える影響を明らかにすることができなかった
- 本研究は8週間という短期間、レジスタンストレーニングを行っている成人のみを対象としているため、他の集団やより長期間への外挿は慎重に行うべきである
- 体脂肪/身体組成の変化を評価するための十分な検出力を有していなかった