NR(ニコチンアミドリボシド)サプリが気道の炎症を約53%低減:COPDに対するNAD+補充療法の可能性を示す初の臨床試験
ポイント
加齢とともに減少する体内物質「NAD+」を補充するサプリメントとして注目されるニコチンアミドリボシド(NR)。今回、デンマークの研究チームが慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象に行った初の臨床試験で、NRが気道の炎症を顕著に軽減することが明らかになりました。
この二重盲検プラセボ対照試験では、60歳以上のCOPD患者40名が参加し、NR群(1日2g、朝夕に分けて摂取)またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、6週間継続しました。主要評価項目である気道の炎症マーカー「IL-8(インターロイキン8)」は、NR群でプラセボ群と比較して52.6%低減しました(95%信頼区間:-75.7%〜-7.6%)。さらに驚くべきことに、この抗炎症効果は摂取終了後12週間経っても持続していました(63.7%低減)。
NR摂取により、血中のNAD+濃度は2倍以上に上昇。探索的解析では、エピジェネティック年齢(生物学的老化の指標)の減少傾向や、DNA修復に関わる遺伝子経路の活性化、細胞老化の抑制を示唆する結果も得られました。
1日2gという比較的高用量でも、消化器症状などの副作用発生率はプラセボ群と差がなく、安全性が確認されました。COPDは喫煙や加齢と関連する進行性の疾患で、「肺の老化」とも呼ばれています。今回の結果は、NAD+補充が加齢に伴う慢性炎症に対処する可能性を示す重要なエビデンスです。
あなたの生活にどう関係する?
【サプリメント選びのポイント】 この研究では「ニコチンアミドリボシド(NR)」が使用されており、1日2g(1回1g、1日2回、食事と一緒に)という用量で効果が確認されました。市販のNRサプリメント(TruNiagenやElysium Health「Basis」など)は1日250-500mg程度の製品が多く、研究で使用された用量より少ない点に注意が必要です。
【摂取タイミング】 食事と一緒に朝夕2回に分けて摂取することで、安定した血中濃度が維持されます。
【期待できる効果】 血中NAD+濃度の上昇は2週間程度で確認されますが、炎症マーカーの改善には6週間以上の継続が必要でした。さらに、効果は摂取終了後も12週間持続したことから、継続的な摂取で蓄積効果が期待できます。
【こんな方に注目してほしい】 ・加齢に伴う慢性的な炎症が気になる60歳以上の方 ・喫煙歴があり、呼吸器の健康が気になる方 ・NAD+サプリ(NMNやNR)に関心があるアンチエイジング志向の方
【NMNとの比較】 NMNも人気のNAD+前駆体ですが、NRはより多くの臨床試験データがあり、細胞への取り込み経路も明確です。両者とも最終的にNAD+に変換されますが、目的や予算に応じて選択してください。
注意点
【研究の限界を理解しましょう】 ・参加者はCOPD患者40名のみと小規模で、一般の健康な方への効果は不明です ・信頼区間が広く(-75.7%〜-7.6%)、効果の大きさには不確実性があります ・NR群のベースラインIL-8値がプラセボ群より高かったため、改善幅が過大評価されている可能性があります ・6週間という短期間の試験であり、長期的な効果や安全性は未検証です
【市販サプリとの違い】 研究で使用されたのはElysium Health社提供の製品で、一般のサプリメントと品質や純度が異なる可能性があります。また、2g/日という用量は多くの市販品の4-8倍に相当します。
【注意が必要な方】 ・現在治療中の疾患がある方は必ず医師に相談してください ・COPDや喫煙歴のない健康な方への効果は本研究では確認されていません ・サプリメントは医薬品ではなく、疾患の治療を目的としていません
【今後必要な研究】 大規模・長期試験での効果確認、症状改善や増悪予防への効果、最適用量の特定が待たれます。
専門用語の解説
研究データ
試験デザイン
総合評価
JADAD Quality Assessment評価詳細
ランダム化
2点 / 2点盲検化
2点 / 2点脱落者・除外者
0点 / 1点対象集団
- 60歳以上
- BMIが18.5 kg/m²以上40.0 kg/m²以下
- 登録時の体重が40 kg以上
- 10パックイヤー以上の喫煙歴があるが、6ヶ月以内に禁煙した元喫煙者
- 吸入ステロイド薬を使用していない
- 呼吸器感染症に関連した症状悪化の経験を報告している
- 血中好酸球数が0.3 x 10^9 cells/L未満
- 気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVC < 0.7(COPD診断用)
介入
ニコチンアミドリボシド(NR)
治療群プラセボ
対照群アウトカム
| Outcome | Type | Effect | p-value |
|---|---|---|---|
| 喀痰インターロイキン-8(IL-8) | 主要 | -52.60 (-75.70--7.60) | p=0.03有意 |
| 全血NAD+レベル | 副次 | 71.10 (57.20-85.00) | - |
| 血漿IL-6レベル | 副次 | - | - |
| エピジェネティック年齢(老化速度) | 副次 | - | - |
| 鼻腔上皮細胞における遺伝子発現 | 副次 | - | - |
| 予測細胞老化 | 副次 | - | - |
| 喀痰好中球分画比率 | 副次 | -58.00 (-78.00--17.00) | p=0.009有意 |
安全性
結論
ニコチンアミドリボシド(NR)の補充は、安定期COPD患者において6週間の治療後、プラセボと比較して気道炎症(IL-8)を52.6%減少させ、その効果は治療終了後12週間持続した。NRは全血NAD+レベルを2倍以上増加させたが、血漿IL-6には効果がなかった。探索的解析では、気道におけるゲノム完全性に関連する遺伝子経路の上方制御と、おそらく細胞老化の減少を介したエピジェネティック老化の減少の兆候が示された。NRは1日2 gで安全かつ忍容性が良好であった。これらの知見は、NRがCOPD患者にとって実行可能な治療選択肢となる可能性を示唆しているが、探索的解析は今後の試験での確認が必要である。限界
- 全患者から対の喀痰サンプルを収集することが困難であったため、当初の検出力計算と比較してサンプルサイズが小さい
- COVID-19パンデミックにより研究が制約を受け、他の炎症マーカーやNAD+メタボロミクスを含む一部の研究評価が失われた
- 6週間という短い治療期間
- 主要アウトカムの信頼区間が大きい
- ランダム化によりNR群のベースラインIL-8レベルがプラセボ群より高く、結果に交絡を生じる可能性がある
- 細胞老化は主要な老化マーカーの包括的評価なしにディープニューラルネットワーク予測を用いて測定された
- 多重性の補正なしに0.05有意水準で多数の二次仮説検定が実施された
- 肺健常対照者の便宜的サンプルにより比較の一般化可能性が制限される