クレアチンローディングで「眠りの質」まで変わる?7日間20gが睡眠・集中力・パフォーマンスに与えた効果
ポイント
筋トレのお供として定番のクレアチンですが、実は「眠りの質」や「頭の冴え」にも効くとしたらどうでしょうか。今回紹介するのは、身体活動量の多い健康な男性14人を対象に、クレアチン一水和物(CrM)20g/日を7日間摂取した場合とプラセボ(偽薬)を摂取した場合を、同じ人で入れ替えて比較したクロスオーバー試験(二重盲検・ランダム化・プラセボ対照)です。
結果、主観的な睡眠の質を10点満点で評価するスケールでは、プラセボよりもクレアチン摂取時の方が有意に高いスコアを記録し(効果量d=0.81というかなりしっかりした差)、就寝時刻も心持ち早まりました。ただし、リストバンド型の活動量計(アクチグラフィー)で客観的に測った睡眠時間・睡眠効率・入眠潜時には差がなかったのがポイントです。つまり「ぐっすり眠れた感」は上がるけれど、実際の睡眠の量や構造そのものは変わらない、という結果でした。
さらに翌日の高強度間欠運動(5mシャトルラン)では総移動距離・最大距離が伸び、注意力を測る抹消テスト(DCT)の成績も向上、Hooper質問票による筋肉痛の自己評価も改善しました。一方で疲労感やRPE(主観的運動強度)、気分(Feeling Scale)には変化がなく、24時間後の遅発性筋肉痛(DOMS)はむしろ悪化するなど、良いことずくめではない点も正直に報告されています。
あなたの生活にどう関係する?
トレーニング前の「ローディング期」として1日20g(5gを4回、4時間おきに水などに溶かして)を7日間試すのが、この研究に準じたやり方です。試合や集中トレーニング期の直前、寝つきや当日のパフォーマンス・集中力を底上げしたい人には合理的な選択肢になり得ます。ただし今回の対象は睡眠に問題のない健康な男性のみ。不眠症や睡眠障害の改善を狙う使い方ではなく、あくまで「調子を整える一助」と捉えましょう。粉末タイプの安価なクレアチン一水和物で十分に再現可能な内容で、割高な特殊製剤である必要はありません。腎機能に不安がある人は事前に医師に相談してください。
注意点
参加者は14人の若い健康な男性のみで、女性・高齢者・睡眠に問題を抱える人には結果を単純に当てはめられません。摂取前のベースライン測定がない点、脳・筋肉中のクレアチン濃度を直接測定していない点も限界です。「睡眠改善サプリ」としての明確な効果は主観的評価にとどまり、客観的な睡眠時間や効率の改善は確認されていないため、過度な誇大広告的な訴求には注意が必要です。持病がある方や薬を服用中の方は、摂取前に医師・管理栄養士に相談することをおすすめします。
専門用語の解説
研究データ
試験デザイン
総合評価
JADAD Quality Assessment評価詳細
ランダム化
2点 / 2点盲検化
2点 / 2点脱落者・除外者
0点 / 1点対象集団
- 非喫煙者
- 病的な睡眠障害がない(ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)スコア5未満)
- 不十分な睡眠衛生がない(睡眠衛生指標(Sleep Hygiene Index)による)
- 怪我がない
- アルコールまたは抗酸化物質・ポリフェノールを多く含む食品を摂取していない
- 実験期間中に薬剤やサプリメントを使用していない
- クレアチンサプリメントを摂取せず雑食性の食事を続けている
- 特定のスポーツ競技への専念や関与なく、週2日以上さまざまな身体活動やスポーツに参加している
介入
クレアチンモノハイドレート(CrM)
治療群プラセボ
対照群アウトカム
| Outcome | Type | Effect | p-value |
|---|---|---|---|
| 主観的睡眠質(SSQ) | 主要 | - | p=0.009有意 |
| 入床時刻 | 主要 | 0.60 | p=0.026有意 |
| 起床時刻 | 主要 | - | p=0.23 |
| 睡眠潜時 | 主要 | - | p=0.35 |
| 睡眠効率 | 主要 | - | p=0.98 |
| 総床上時間 | 主要 | - | p=0.6 |
| 総睡眠時間 | 主要 | - | p=0.81 |
| Hooper質問票 - 睡眠項目 | 副次 | - | p=0.43 |
| Hooper質問票 - 疲労項目 | 副次 | - | p=0.55 |
| Hooper質問票 - ストレス項目 | 副次 | - | p=0.23 |
| Hooper質問票 - 筋肉痛項目 | 副次 | - | p=0.046有意 |
| Hooper指数(合計) | 副次 | - | p=0.63 |
| 総走行距離(5mSRT) | 主要 | 0.88 | <0.001有意 |
| 最良走行距離(5mSRT) | 主要 | 0.76 | <0.05有意 |
| 疲労指数(5mSRT) | 副次 | - | p=0.58 |
| パフォーマンス低下率(5mSRT) | 副次 | - | p=0.16 |
| 自覚的運動強度(RPE) | 副次 | - | p=0.42 |
| 数字抹消試験(DCT)スコア | 主要 | - | p=0.013有意 |
| 感情尺度(Feeling Scale) | 副次 | - | p=0.32 |
| 主観的回復状態(PRS) | 副次 | - | <0.001 |
| 遅発性筋肉痛(DOMS) | 副次 | - | <0.001 |
結論
短期間(7日間、1日20g)のクレアチン一水和物(CrM)負荷プロトコルは、プラセボと比較して、補給期間中の主観的睡眠の質(Subjective Sleep Quality、SSQ)を改善し、就床時刻を早め、自覚的筋肉痛(Hooperスケール)を軽減し、認知機能(Digit Cancellation Test、DCT)を向上させ、高強度間欠運動(5m Shuttle Run Test、5mSRT)における運動パフォーマンス(総走行距離および最高記録距離)を増加させた。しかしCrMは、運動後72時間までの客観的なアクチグラフィー由来の睡眠パラメータ(入眠潜時、睡眠効率、総睡眠時間、離床時刻、総臥床時間)、疲労指数、パフォーマンス低下率、自覚的運動強度(RPE)、感情尺度(Feeling Scale)、または回復指標(PRS、DOMS)に対しては、特定の時点における個別の差異を除き、有意な影響を及ぼさなかった。クレアチン一水和物が睡眠に及ぼす影響は、広範な生理学的変化というよりも知覚的な改善に限定されるようであり、CrMが従来のエルゴジェニック(運動能力向上)効果としての役割を超えた効果をもたらす可能性が示唆される。限界
- 補給前(ベースライン)のパフォーマンステストが実施されていないこと
- CrMが各アウトカムに影響を及ぼす正確な生物学的経路が完全には解明されていないこと
- アクチグラフィーは、睡眠構築(睡眠アーキテクチャ)や主観的な休息感など、睡眠の質のすべての側面を捉えられない可能性があること
- 補給期間の前後で筋肉および脳内のクレアチン濃度が評価されなかったため、組織内クレアチン増加の程度を判定できなかったこと
- CrMの効果は使用者間で大きく異なる可能性があり、本対象集団から得られた結果が他の集団に一般化できるとは限らないこと