アシュワガンダは"追い込み期"のストレスを和らげる?チームスポーツ選手42日間試験で見えた男女別の効果
ポイント
ハードなプレシーズン合宿は体づくりに欠かせない一方、コルチゾールが上がりやすく回復が遅れたり、オーバートレーニングのリスクが高まったりします。スペインの研究チームは、ラグビー・水球・サッカーの選手56人(男女各28人)を対象に、KSM-66アシュワガンダ根抽出物600mg/日、またはプラセボ(ひよこ豆粉カプセル)を42日間、二重盲検・ランダム化・プラセボ対照で比較しました。結果は男女で異なるパターンを示しています。女性ではプラセボ群の唾液コルチゾールが明らかに上昇したのに対し、アシュワガンダ群は安定を維持し、疲労感・筋肉痛・総合的な「調子」を示すHooper Indexも改善しました。男性ではプラセボ群のコルチゾン(コルチゾールの代謝物)が上昇したのに対しアシュワガンダ群は安定し、さらに垂直跳び(カウンタームーブメントジャンプ)の高さが有意に向上しました。一方でベンチプレスやスクワットの1RM、持久力テストには差が見られませんでした。つまり「コルチゾールを無理に下げる」のではなく、練習負荷で上がりがちなストレス反応を"行き過ぎさせず安定させる"方向に働いた可能性が示唆される結果です。2026年1月の発表後、業界メディアも「性別特異的な回復サポート」として注目しており、青少年サッカー選手を対象とした追加試験も進行中です。
あなたの生活にどう関係する?
臨床試験で使われたのはKSM-66(withanolides 5%以上に標準化された根由来抽出物)600mg/日を、夕食時に水と一緒に1回摂取するというシンプルな方法です。ハードな練習期や大会前などコルチゾールが上がりやすい時期に試す価値があり、女性は「回復実感」の改善、男性は「跳躍力」の向上が報告されました。製品選びでは「root extract(根由来)」「withanolides ≥5%標準化」の表記を確認し、葉由来や含量不明の安価品は避けましょう。効果実感には少なくとも4〜6週間の継続摂取が必要で、単発摂取での即効性は期待しにくい点も踏まえておくとよいでしょう。
注意点
対象はバルセロナの準エリート選手56人という限られた集団で、しかも夏の高温多湿(気温約30℃、湿度70〜80%)という特殊な環境下での結果です。効果は男女で分かれ、本研究は性差の検証を目的に設計されたものではないため、知見は仮説的なものと捉えるべきです。原料・資金はメーカー(Ixoreal Biomed)提供で利益相反があります。市販製品は用量・原料規格が試験品と異なる場合があり、同等の効果を保証しません。過去には葉由来や含量不明の製品での肝障害報告もあるため、薬を服用中の人や既往症のある人は使用前に医師へ相談してください。
専門用語の解説
研究データ
試験デザイン
総合評価
JADAD Quality Assessment評価詳細
ランダム化
2点 / 2点盲検化
2点 / 2点脱落者・除外者
1点 / 1点対象集団
- スペイン、バルセロナのプロスポーツアカデミーに所属するチームスポーツ選手
- 18歳以上
- 準エリートレベルで競技していること
- 健康であり疾患がないと判定されていること
介入
KSM-66アシュワガンダ根抽出物
治療群プラセボ(ひよこ豆粉)
対照群アウトカム
| Outcome | Type | Effect | p-value |
|---|---|---|---|
| 唾液コルチゾール | 主要 | - | p=0.01有意 |
| 唾液コルチゾン | 副次 | - | p=0.0003有意 |
| 唾液アルファアミラーゼ | 副次 | - | p=0.022有意 |
| 唾液テストステロン | 副次 | - | p=0.915 |
| 唾液DHEA-S(デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩) | 副次 | - | p=0.386 |
| テストステロン/コルチゾール比(T/C比) | 副次 | - | p=0.351 |
| Hooper Index(フーパー指数)総合スコア | 副次 | - | p=0.005有意 |
| 遅発性筋肉痛(DOMS) | 副次 | - | p=0.0002有意 |
| 疲労感 | 副次 | - | p=0.015有意 |
| ストレス感 | 副次 | - | - |
| 睡眠の質 | 副次 | - | - |
| 握力 | 副次 | - | - |
| スクワット1RM(最大挙上重量) | 副次 | - | - |
| ベンチプレス1RM(最大挙上重量) | 副次 | - | - |
| デッドリフト1RM(最大挙上重量) | 副次 | - | - |
| パワークリーン1RM(最大挙上重量) | 副次 | - | - |
| 懸垂パフォーマンス | 副次 | - | -有意 |
| カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)高 | 副次 | - | p=0.0003有意 |
| 立ち幅跳び | 副次 | - | - |
| ブロンコテスト(有酸素能力) | 副次 | - | - |
| サプリメント満足度 | 副次 | - | p=0.0004有意 |
安全性
結論
本二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)では、プレシーズントレーニング期間中に600 mg/日のアシュワガンダ根エキスを42日間補給したところ、プラセボと比較して性別特異的な効果が認められた。すなわち、女性アスリートでは回復の自覚(Hooper指数、遅発性筋肉痛(DOMS)、疲労感)の改善、男性アスリートでは下肢筋力(カウンタームーブメントジャンプ:CMJ)の改善が見られた。トレーニング後の唾液中コルチゾール(女性)および唾液中コルチゾン(男性)は、アシュワガンダ補給群では安定を維持した一方、プラセボ群では有意な上昇が認められ、アシュワガンダはトレーニングに伴うホルモン反応が高まる時期における生理的ストレスバイオマーカーの安定化に寄与する可能性が示唆された。限界
- 便宜的サンプリングを用いたため、研究対象集団を超えた外的妥当性が制限される
- クロスオーバーデザインを採用していないため、潜在的交絡因子の統制に限界がある
- 食事摂取量が記録されておらず、回復およびパフォーマンスのアウトカムに対する潜在的交絡因子となりうる
- 参加者が異なるトレーニング背景とパフォーマンスレベルを持つ3種類の異なる競技から集められたことによるベースラインの異質性
- 参加者間で評価の実施順序が標準化されていない
- 概日リズムの変動を減らすために夕方に唾液採取を行ったにもかかわらず、概日リズムの個人差は潜在的な限界として残る
- Bonferroni補正を行ったにもかかわらず、多重比較により偽陽性結果のリスクが増加する可能性がある
- 本研究は性差の検討を主目的として設計されたものではない
- 試験期間中、参加者は高い周囲温度(約30°C)と湿度(70~80%)に曝露されており、これがホルモンおよびパフォーマンスの反応に影響を与えた可能性がある
- 欠測データ(ホルモン値29件、筋力値32件)への対応として多重代入法を要した